VACCINATION
わんちゃんの生活環境には目には見えない危険な伝染病が潜んでいます。伝染病はお外にいかないわんちゃんでも感染する可能性はありますし、お散歩やおでかけ、トリミング、ホテル、ドッグランなどわんちゃんが集まる場所ではなおさら感染の危険性が増します。 ワクチン接種をしないことで、そのわんちゃん自身が危険にさらされると同時に、そのわんちゃんから他のわんちゃんに感染を拡大させてしまう可能性もあります。 伝染病の中には直接わんちゃんの命にかかわったり後遺症を残したりするものもあるので、「うちの子は大丈夫」といった安易な考えはやめましょう。 ワクチン接種はおそろしい伝染病から大切な家族(わんちゃん)を守ってくれる大事な習慣です。 「やっておけばよかった」とならないように定期的に予防接種をしましょう。
子犬・子猫のワクチネーション
わんちゃんでは、生後6~8週(およそ1か月)、9~11週(およそ2か月)、12~14週(およそ3か月)に3~4週間隔でそれぞれ1回ずつの計3回接種、ねこちゃんでは、8週(およそ2か月)~12週(およそ3か月)に3~4週間隔でそれぞれ1回ずつの計2回接種を推奨しています。 ただし、わんちゃんでは初回ワクチン時の月齢が2ヵ月齢以降であれば、3~4週間隔の2回接種でよいと考えています。 幼齢期では母子免疫によってさまざまな感染症から守られていますが、 実は母子免疫*はワクチンの効果を抑制する最大の要因ともなっています。 わんちゃんでは生後約4~8週が最もワクチンの効果が母子免疫により抑制されるといわれており、 この抑制効果は生後6~16週の間に徐々に消失しますが、完全に消失する正確な週齢はわんちゃんによってさまざまです。 初乳を十分に摂取した場合でも、生後約8~14週頃には母子免疫は弱くなり、ワクチン接種をしていなければワクチン抗体もないため、感染症に対して十分な免疫反応ができない感染危険期となります。子犬・子猫のワクチネーションではこの期間をできるだけ短くするように設定していきます。 以上のことから、ある程度の余裕をもってわんちゃんでは生後約6~8週で初回のワクチンを接種することを推奨しています。また、1回だけのワクチン接種では十分な免疫反応が起こらないため、ブースター効果**を期待するために1~2回の追加接種を勧めています。 特に、生後約6~8週のわんちゃんの初回ワクチンでは母子免疫により十分な免疫反応が起こらない可能性もあるため、追加接種は2回行った方がよいでしょう。 *:母子免疫は、初乳中に含まれる抗体(90~95%)と母体内で母親から胎子に移行した抗体(5~10%)に由来した全身性受動免疫と通常乳に含まれる抗体に由来する局所性受動免疫から成り立っています。 **:ブースター効果とは、再感染時あるいは再ワクチン接種時に抗体(IgG)が速やかかつ大量に、長い期間にわたって産生されるようになる追加免疫効果のこと。これにより感染症にかかりづらくなるとともに感染しても症状が軽く、短くてすむようになります。わんちゃんのワクチン接種頻度について
最近「混合ワクチンは3年に1回*」といった情報がひとり歩きをしています。この情報自体は決して間違いではないと思いますが、これが日本のすべてのわんちゃんに当てはまるものではないと考えています。 ワクチンの接種間隔には複数の要因が関わっており、獣医師はそれをすべて考慮した上でワクチンの種類や間隔を決定しています。 その地域の集団免疫率や感染症の流行状況あるいはコアワクチン**やノンコアワクチン***によって免疫持続時間****が異なるため、わんちゃんによって接種間隔を変える必要があります。また、異なるわんちゃんに同じワクチンを接種したとしてもわんちゃんの免疫反応はさまざまです。ワクチンの有効性をみる抗体価検査*****をしてみると、しっかり抗体価(免疫反応)が上がっているわんちゃんもいれば、十分な抗体価(免疫反応)を示さないわんちゃんもいるのです。 もちろん、ワクチン接種による副反応を考えれば、過剰なワクチン接種は控えるべきですが、十分な免疫が得られなければ接種自体に意味がないどころか、わんちゃんの体内に異物を入れてただ負担をかけるだけになってしまいます。 「3年に1回」というワードだけをうのみにするのではなく、どういう裏付けがあるのかをしっかり把握する必要があると考えます。 *:この情報の基となっているのは主に世界小動物獣医師会(WSAVA)やアメリカ動物病院協会(AAHA)といった組織によるも のです。本組織では、このガイドラインは世界すべてのわんちゃんに推奨されるわけではなく、それぞれの状況に応じたワク チンネショーンをすべきとしています。 **:コアワクチンとは、すべてのわんちゃんに接種が推奨されているワクチンのことです。 コアの判断基準は、 1. 感染の結果、非常に症状が重くなるもの 2. 人獣共通感染症であり、人の健康を害する可能性のあるもの 3. その感染症が広く流行しており、容易に伝播し、多くの動物に被害の広がる可能性のあるもの に基づいており、わんちゃんの混合ワクチンとしては犬ジステンパーウイルス、犬パルボウイルス、犬アデノウイルスが含 まれます。 ***:ノンコアワクチンとは、それぞれのわんちゃんの危険度に基づき、飼育環境や地域での感染症の流行状況によって接種が 推奨されるワクチンのことです。 わんちゃんの混合ワクチンとしては犬パラインフルエンザウイルス、レプトスピラ、犬コロナウイルスが含まれます。 ****:感染症に対して十分な免疫反応が得られる期間はウイルスあるいは細菌によって異なっています。 それぞれの免疫持続時間はWSAVAあるいはAAHAによると、 犬パルボウイルス(弱毒生):5~9年あるいはそれ以上 犬アデノウイルス(弱毒生):5~9年あるいはそれ以上 犬ジステンパーウイルス(弱毒生):5~9年あるいはそれ以上 レプトスピラ(不活化):3~12か月 としています。 そのため、コアワクチンに関しては、3年に1回以上接種しないことを推奨しています。 逆に、ノンコアワクチンや不活化ワクチン、バクテリンに関しては接種が推奨される状況では1年に1回の接種を推奨して います。(レプトスピラに関しては、濃厚感染地域では半年に1回の接種を勧めている) ただし、上記のデータは研究施設等の結果であり、一般生活レベルでの調査ではありません。 また、これらの研究に用いた症例数は決して多くはなく、長期間の追跡調査もありません。 そのため、上記データをどこまで一般生活レベルに当てはめてよいかは難しいところです。 *****:今までにワクチンによる副反応が起きた場合や、従来通り1年に1回接種するのが不安な場合などは、外部の検査機関に 血液を提出してそれぞれの抗体価を測定することも可能です。 その検査結果により客観的に推奨されるワクチンの種類や接種時期を判断することができます。わんちゃん
6種混合ワクチン
- ジステンパーウイルス感染症
- アデノウイルスⅠ型感染症(犬伝染性肝炎)
- アデノウイルスⅡ型感染症(犬伝染性喉頭気管炎)
- パラインフルエンザウイルス感染症
- パルボウイルス感染症
8種混合ワクチン
- ジステンパーウイルス感染症
- アデノウイルスⅠ型感染症(犬伝染性肝炎)
- アデノウイルスⅡ型感染症(犬伝染性喉頭気管炎)
- パラインフルエンザウイルス感染症
- パルボウイルス感染症
- レプトスピラ感染症(カニコーラ型)
- レプトスピラ感染症(ヘブドマディス型)
ねこちゃん
3種混合ワクチン
- ヘルペスウイルス感染症(猫ウイルス性鼻気管炎)
- 猫カリシウイルス感染症
- パルボウイルス感染症(猫汎血球減少症)
5種混合ワクチン
- ヘルペスウイルス感染症(猫ウイルス性鼻気管炎)
- 猫カリシウイルス感染症
- パルボウイルス感染症(猫汎血球減少症)
- 猫白血病ウイルス感染症
- クラミジア感染症